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下肢動脈疾患( LEAD: Lower extremity arterial disease)

Healthcare

監修: 中村 茂 先生(京都桂病院 副院長・心臓血管センター所長 )

心臓から流れ出た血流は、大動脈を通して脳、内臓、手足に供給されます。腕や足につながる血管を末梢動脈といいます。

この腕や足に向かう動脈に狭窄が生じた病気を末梢動脈疾患(PAD: Peripheral arterial disease)といいます。動脈硬化は腕より足に生じやすいことから、腹部大動脈から左右の足に向かう血管の病気を下肢動脈疾患( LEAD: Lower extremity arterial disease)と呼びます。

下肢動脈疾患(LEAD: Lower extremity arterial disease)の症状

下肢動脈疾患は、症状から4つの段階に分けられています。

フォンテイン分類

1954年、ドイツの医師 R・Fontaineによって提唱された評価基準です

分類

症状

おもな特徴

I度

無症状・気が付かない程度の症状

無症状の場合もあれば、足先が冷たく感じたり、しびれ感がでることもあります。これらは日常的に有り得る症状なので、病的な症状であるか判断がつかないことがあります。

II度

間欠性跛行(かんけつせいはこう)

ある程度歩くと足に痛みやしびれが生じ、休むと症状が消失します。歩くと足の筋肉が多くの血液を必要としますが、血流が悪いと筋肉が酸素不足となり痛くなります。止まると血液の必要量が減るので症状が消失します。

III度

安静時疼痛

足の血流が極度に少なくなると、歩かなくても足に痛みが生じ、夜もよく眠れなくなるなどの症状がでます。

IV度

潰瘍・壊疽(えそ)

血流がほとんど消失すると、足に潰瘍(傷)ができたり、組織が壊死する(死んでしまう)状態になります。感染を起こすとばい菌が全身にまわり死亡する危険が生じるので、足の切断が必要なことがあります。

下肢動脈疾患の原因、危険因子

下肢動脈疾患の原因は「動脈硬化」です。
血管壁内にコレステロールや脂質がたまると、血管が硬くなり、その結果血管が狭くなります。喫煙、糖尿病、高血圧、脂質異常症のある(コレステロールが高い等)人はそうでない人に比べて大幅にかかりやすくなります。糖尿病患者さんでは末梢動脈疾患の発症は3-4倍とされています。

下肢動脈疾患がある人は、足だけでなく心臓や脳の血管にも動脈硬化が合併する率が50%と高く、心筋梗塞や脳卒中を発症するリスクが高まっています。下肢動脈疾患が発見されるということは、全身の血管に動脈硬化が拡がっている可能性があり、下肢だけでなく全身もチェックする必要があります。

透析患者さんと動脈硬化

腎不全により腎機能が廃絶しても、透析治療を受けることで生命を維持することができます。しかし、カルシウムとリンの代謝バランスが崩れやすく、全身の動脈硬化が進行しやすくなります。そのため、定期的な検査で、動脈硬化疾患の早期発見と治療を行うことが患者さんのQOL(Quality of Life:生活の質)の維持につながります。

急性下肢虚血(ALI: Acute limb ischemia)

これまで末梢血管の動脈硬化により徐々に血流が低下する病気の説明をしてきましたが、急激に下肢の血流が途絶する病気を急性下肢虚血といい、緊急治療が必要な病気として分けています。
急性下肢虚血の原因は主に「塞栓性」と「血栓性」の2つに分けられます。

急性下肢虚血の原因

塞栓症

主に心房細動という不整脈のある患者さんで、心房内にできた血のかたまり(血栓)が流れ出すことで末梢の動脈に突然に詰まる状態で、頭の血管に飛ぶと脳梗塞を生じます。​

血栓症

もともと狭くなっていた足の動脈病変部で血液が固まり、閉塞することで発生します。また、動脈の内壁が裂けて血流が遮断される動脈解離や、バイパス手術に使用された人工血管(グラフト)に血栓ができる場合もあります。

急性下肢虚血の症状

急性下肢虚血は早期の治療が必要な状態で、5つの症状があります。いずれかの症状が現れた場合は、すぐに医療機関を受診してください。

これは英語のPで始まる単語を合わせて5Pと称します

Pain (患肢の疼痛)

突然の強い痛み。じっとしていてもジンジンと痛む。

Pallor (皮膚蒼白)

足やつま先の皮膚が蒼白になる。進行すると紫色になったり黒ずんだりする。​

Pulselessness (脈拍消失)

足首やひざ裏の脈がふれなくなる。

Paresthesia (知覚鈍麻)

足がしびれる。進行すると感覚が鈍くなり、触っても冷たさや痛みを感じなくなる。

Paralysis (運動麻痺)

足や指が動かせなくなる。