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狭心症と心筋梗塞の治療

Healthcare

監修: 中村 茂 先生(京都桂病院 副院長・心臓血管センター所長 )

狭心症の治療には、薬物治療、心臓カテーテル治療、冠動脈バイパス手術があります。
心筋梗塞の場合は早急の血流再開が必要であり緊急のカテーテル治療を行います。

薬物治療

血栓による閉塞を予防するための抗血小板薬、血流を改善させる血管拡張薬等を用います。
虚血性心疾患の薬物治療は、心臓への酸素供給を改善し、症状を緩和し、疾患の進行を抑えることが目的です。

血をサラサラにする薬

抗血小板薬

血小板の機能をセーブして血管内で血栓形成を防ぎます。

心臓の仕事をセーブする薬

β遮断薬

心拍数を抑制して心臓の仕事量を軽減し、酸素需要を減らします。
狭心症の症状を緩和し、生命予後改善効果があります。

血管を広げる薬

硝酸薬と亜硝酸薬・カルシウム拮抗薬

冠動脈を拡張させ、血液供給を増加させます。
狭心症の症状を緩和します。

血圧を下げる薬

ACE阻害薬・ARB

血圧を下げ、心臓の仕事量を減少させます。また、心臓の機能を保護します。

コレステロールを下げる薬

スタチン

血中のコレステロールを低減し、虚血性心疾患の進行を遅らせます。

虚血性心疾患では、薬物治療と生活習慣の改善が有効です。
症状や心筋虚血の程度により、治療法を選択していきますのでドクターと相談して治療方針を決めましょう。

冠動脈カテーテル治療(PCI: Percutaneous Coronary Intervention )

手首や脚の付け根からカテーテルと呼ばれる細い管を冠動脈に挿入し、狭くなった病変を拡げて血流を改善させる治療です。

手術を行わずに狭窄部を治療するカテーテル治療は1978年スイスで初めて行われました。
カテーテルを通して冠動脈内に、約0.4mmの細いガイドワイヤーを進めて狭窄部を通過させます。このガイドワイヤーをレールにして、先端に風船のついたカテーテル(バルーンカテーテル)を狭窄部まで導入し膨らませることで、狭くなった血管を内側から拡げます。血管には弾力性があり拡げてもまた戻ってしまうことがあります。それを防止するためにメッシュ状の金属の筒をバルーンとともに血管内に植え込み、中から支えて拡張する器具をステントといいます。

PCI ステント留置術

1. 狭窄部にガイドワイヤーを通過させる

2. バルーンカテーテルとステントを挿入

3. バルーンを膨らませステントを拡げる

4. バルーンを萎ませステントだけを植え込んでバルーンを抜去します。現在のステントの表面には再狭窄防止の薬剤が塗られています。

カテーテル治療は患者さんの体の負担が少ないことが大きなメリットです。局所麻酔で行え、入院期間が短くて済みます。

冠動脈バイパス手術(CABG:Coronary Artery Bypass Grafting )

胸腔内にある動脈や足の静脈を用いて狭窄部の末梢にバイパス血管を吻合して血流を改善させる手術による治療です。

冠動脈バイパス手術は、狭くなったり詰まった冠動脈の先に別の血液の通り道(バイパス)を作る手術で1967年米国で初めて行われました。虚血心筋に血液を送る、画期的な発明でした。
心臓を一時的に停止させ、人工心肺という機械で全身に血液を送っている間に足の静脈を吻合します。近年は心臓をとめずに吻合を行う方法も広く行われています。
バイパスに用いる足の静脈の寿命は10~20年であり、現在は長期開存成績のよい胸腔内の動脈を組み合わせて用います。

バイパス手術はカテーテル治療と比較し糖尿病患者さんや複雑な病変に行われ、予後がよいといわれています。

全身麻酔で胸を切って行うため、入院期間がカテーテル治療と比べると長くなります。

胸の中央を切らずに左胸の肋間を小切開して行うバイパス手術(MICS-CABG:Minimally invasive cardiac surgery - CABG)という、傷口が小さく術後の回復が早い手術を行う病院も増えています。