虚血性心疾患
Healthcare
監修: 中村 茂 先生(京都桂病院 副院長・心臓血管センター所長 )
世界の死亡要因の1位は心疾患です。これは日本においても脳血管疾患、悪性新生物(がん)とともに3大疾病に数えられています。心疾患の中でも、動脈硬化により血管が詰まる「虚血性心疾患」について、病気のなりたち・治療法から治療後の生活までのご紹介します。
心臓の栄養血管(冠動脈と名付けられています)の血流が低下すると胸が締め付けられるような症状がでます。あたかも心臓をせばめられるような症状となるので、100年以上前に狭心症という名がつけられました。つまり臨床症状から命名された診断名です。
冠動脈の血流が途絶すると心筋の細胞は死んでしまいます(壊死)。この病態を心筋梗塞といい、狭心症と心筋梗塞は冠動脈の血流低下から生じる一連のものです。時代が進むにつれてさまざまなことが明らかになり治療法が発達してきました。
狭心症と心筋梗塞は心筋に十分な血液が行き渡らないことで生じる病気であり、現在、虚血性心疾患と総称しています。
虚血性心疾患の要因は冠動脈の動脈硬化です。動脈硬化は、血管の内側にコレステロール等が溜まったり、加齢により血管が硬くなったりして、血管が狭くなることです。癌ではありませんが、動脈硬化は徐々に進行していくと考えられています。
動脈硬化が発生しやすい誘因として、高血圧症、高脂血症、糖尿病、肥満、喫煙などがあります。これが健診でこのような病気が発見されると治療を勧められる理由です。


心臓に血液を運ぶ 「冠動脈」
冠動脈(かんどうみゃく)は心臓が送り出した酸素化された血液を自身の心筋に供給するため、主に3本の血管で心臓をとりまくように張り巡らされています。
冠動脈に問題が起こると、心筋へ血液が届かなくなり、心筋が収縮できなくなったり、致死性不整脈の原因となります。
心臓に冠をかぶせたような形が名前の由来です。
狭心症
労作性狭心症
階段を上るなど身体に負荷がかかると生じる狭心症です。
身体に負荷がかかると心拍数が上昇したり心臓の仕事量が増加していきます。しかし冠動脈が細くなっていると血流が十分に供給できないため、心臓が酸素不足となります。その結果胸が痛むなどの症状がでます。労作をやめて安静にすると、心臓の仕事量が軽減されるので、痛みが消失します。一時的な変化であり、病気と気づかないことがあります。

冠れん縮性狭心症
就寝中やゆっくり横になっているときなどにも生じる狭心症です。
これは冠動脈が痙攣して血流が低下することで発症します。自律神経のバランス障害ともいわれていますが原因は不明です。ストレス・喫煙などの影響があるといわれています。安静狭心症や異型狭心症ともいいます。

胸を圧迫される、恐怖感を伴うなどの症状があれば医師の診断を受けましょう。
心筋梗塞
心筋梗塞は、冠動脈が突然閉塞することで心筋に血液が届かなくなり、酸素不足で細胞が死んでしまう状態で、医療用語では心筋が壊死する病態です。
強い胸の痛みが持続し、安静でも改善しません。これは心筋壊死が進行している状態であり、冷や汗や吐き気を伴うこともあります。

突然の強い胸の痛みが10分以上続く場合は、ためらわずに救急車を呼びましょう。

心筋梗塞とAED
突然冠動脈が閉塞する心筋梗塞では、重篤な不整脈を誘発し、心臓のポンプ機能が停止することがあります。これが突然死の原因となります。AEDとは、Automated External Defibrillatorという「自動体外式除細動器」と呼ばれる医療機器です。心臓に電気ショックを与え、重篤な不整脈を取り除き、心拍を正常なリズムに戻します。電源を入れると音声ガイドが流れるので、その指示に従い初めての方でも操作ができるように設計されています。近年、一般の方がAEDを使用して救命した事例も増えています。ぜひAEDを活用してください。
日本AED財団ホームページ(外部サイト)正常 | 狭心症 | 心筋梗塞 |
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![]() |
![]() 心筋が一時的に血流不足となるが、回復する |
![]() 心筋が壊死する |
狭心症は一時的な酸素不足により心臓の機能低下や症状を起こすもので、心筋梗塞は血管の完全な閉塞により心臓の一部が壊死する状態です。