医療機器分野や産業機器分野で使われる、さまざまなワイヤー製品。
ひと口にワイヤーと言ってもピンと来ない方もいらっしゃるかもしれません。
でも、表だってはわからないけれど、様々な医療機器から、自動車やエアコン、OA機器、建築や漁業の分野に至るまで、私たちの身の回りの多くの製品には、ワイヤー製品が使われています。
そのなかでも、「ガイドワイヤー」をはじめ、「ガイディングカテーテル」、「バルーンカテーテル」といった、カテーテル治療に不可欠な医療機器を主力として開発・製造・販売を行っているのが朝日インテックです。
カテーテル治療に使われる製品には、直径わずか0.35mmという細さのものも。朝日インテックは、医療機器分野における卓越した開発力と製造技術で、日本国内のみならず、世界でも高いシェアを誇っています。
そもそも、朝日インテックの製品が活躍するカテーテル治療とはどういう治療法なのでしょうか。
カテーテル治療とは、狭心症や心筋梗塞など、心臓の血管(冠動脈)がコレステロールなどによって詰まったり、狭くなることで起きる疾患に対する治療法のひとつです。
従来は、投薬による薬物治療か、症状が重い場合は開胸して大がかりな外科手術となる冠動脈バイパス術が一般的でした。
これに対し、近年著しい進歩を遂げているのがカテーテル治療。手首や足の付け根からカテーテルと呼ばれる細い管を挿入し、狭くなった血管を広げる治療法です。開胸することなく治療が行えることで、患者さまにとってより痛みが少なく(低侵襲)、入院日数が短縮されて早期の社会復帰が可能となるなど経済的負担も軽いことから、冠動脈疾患治療の主流となっています。
この治療に使われる製品が、ガイドワイヤー、ガイディングカテーテル、バルーンカテーテルの3製品です。朝日インテックはカテーテル治療に不可欠なこれらの製品の開発・製造・販売を行うことにより、近年ますます拡大している低侵襲治療の普及に貢献しています。
カテーテル分野は、低侵襲治療の広がりによって大きく拡大し続けている市場です。
朝日インテックの主力製品であるガイドワイヤーは、現在世界110を超える国と地域で展開しており、BRICsを中心とした新興国の経済発展により、これらの地域におけるカテーテル治療の症例数も大きく増加しつつあります。
朝日インテックは、こうした時代の流れに的確に対応し、成長市場が求める医療に不可欠な製品を供給していくことによって、グローバル規模での持続的な成長を目指しています。
では、グローバル規模でシェアを拡大し続けている朝日インテックの競争力の源泉はどこにあるのでしょうか。
朝日インテックの強みは、素材から製品に至るすべてを賄うことができる、一貫生産体制です。
はじまりは1976年。当時の朝日インテックは、大阪で産業機器に使用される極細ステンレスロープの製造・販売を行う小さな町工場でした。
その後、この技術を活かせる分野として医療機器事業への参入を果たしますが、ここで大きな転機が訪れます。飛躍のきっかけは、ある医師からのオファーでした。
当時、CTO(慢性完全閉塞)の治療は、その大半を外科手術に頼っていました。そんな折、カテーテル治療の第一人者である医師から、CTOを治療できるガイドワイヤーを作れないかと依頼が舞い込みました。もともとこの話は海外の大手医療機器メーカーに持ち込まれたものでしたが、当時の技術水準では実現することが難しく、また、医師たちにとっても、この病気をカテーテルで治療するという常識はなかったのです。
カテーテル治療のなかでもCTOの治療は特に難易度が高く、成功するためには、医師の高度な手技と、その微細な感覚を的確に反映することのできる、これまでにない高性能なガイドワイヤーが必要でした。
未知の領域への挑戦でした。しかし、医師の指先の感覚を忠実にガイドワイヤーに伝えるためには、朝日インテックの持つ4つのコア技術、特に高度なトルク技術が不可欠でした。
これまでに培ってきた極細ステンレスロープの技術に加え、現場の医師たちの声を地道に吸い上げ、素材レベルにまで立ち返って何度も試行錯誤を繰り返す迅速かつきめ細かな試作対応力、そして、なんとしてもこの難病を治療できる製品を作りたいという職人魂により、1995年、ついに日本で初めてCTO治療用PCIガイドワイヤーの開発に成功したのです。その後、この医師らによる学会での治療成功症例の報告や海外での活躍により、朝日インテックの製品と技術は世界中で知られるようになっていきました。
部品を外注し、アセンブリ(組み立て)を行う他の医療機器メーカーとは異なり、朝日インテックの素材から製品までの一貫生産体制、そして創業以来変わることのない現場主義というDNAが、他社には真似のできない「スピード」と「試作対応力」を実現しているのです。
医療機器分野への進出前夜、産業機械用のステンレスロープをはじめとする工業製品は、円高の進行により大幅なコストダウンを要求されるなど、厳しい状況に置かれていました。こうした状況に対応するため、朝日インテックも生産拠点を海外(タイ)に移します。同時に、生き残るためにも、これまでとは違った高付加価値なものづくりが必要とされていました。この時代の閉塞感のなかで、朝日インテックは、
これらの条件を満たす事業として、医療機器分野に挑戦することを決断したのです。
現在朝日インテックは、タイ、ベトナム、フィリピンに生産拠点を構えています。日本の拠点は研究開発・試作に特化し、海外の工場を量産の拠点とすることにより、コスト競争力を強化するとともに、研究開発に多くの経営資源を投入することを可能にしています。
日進月歩の医療業界において、朝日インテックは将来を見越した研究開発をさらに強化し、より優れた製品を継続的に生み出すことのできる「研究開発型企業」として、技術の最先端を走り続けています。
新中期経営計画「ASAHI Going Beyond 1000」の詳細は、こちらをご覧ください。
朝日インテックでは、「低侵襲治療製品を機軸とし、開発から製造・販売までトータルサポートできるグローバル医療機器企業へ」をテーマとして、医療機器の製造に加え、販売力の強化による収益拡大を図ります。
医療機器分野を主軸として収益基盤を強化し、グローバル医療機器企業への飛躍を目指します。
CTO治療を可能にする画期的なPCIガイドワイヤーの登場は、世界中の医療関係者に大きな驚きを持って迎えられました。学会での症例報告を通じてCTO治療成功率の上昇が明らかになるにつれ、朝日インテックは一躍注目を浴びる存在となったのです。
1996年、この分野における世界的な権威であるドクターからの「アメリカでも製品を出してくれないか」という依頼を契機に、海外への展開は一気に加速していきました。
今日もさまざまな医療現場で、医師たちとの活発な議論や熱い意見交換が行われ、新たな製品の開発に活かされています。根底にあるのは、徹底した現場主義。医療現場を本当に理解していなければ、医師の真のニーズを掴み、優れた製品を生み出すことはできないからです。
こうした医師たちを通じて、治療の成果が学会で報告されるとともに、世界各国での治療技術の普及活動が行われ、それがASAHIブランドの認知度向上につながっているのです。
朝日インテックでは現在、循環器系領域の製品が主力ですが、対象患部領域を末梢(下肢)、腹部、脳血管などの循環器以外にも拡大してきています。
これらの製品のなかには、すでに国内で大きなシェアを獲得し、世界で高い評価を得るものも年々増えています。今後も新しい技術・製品の日本における成功事例を、積極的に海外へと展開していきます。
医療業界のトレンドは、これまで常に欧米が主導してきました。医療先進国であるように見える日本においても、現場で使用される医療機器や医薬品の多くは、欧米で開発されたものが大半を占めていました。
そのような潮流のなか、朝日インテックは日本で開発したガイドワイヤーを武器に、世界を席巻。製品の普及によってCTO治療という、新しい市場を作り出すとともに、より一層の拡大を目指し、まい進しています。